運命を信じる? The First of a Million Kisses/Fairground Attraction


運命を信じるか?それとも信じないか?


様々な偉人や哲学によってそれは肯定され、あるいは否定されてきた。


少なくとも僕はフェアグラウンドアトラクションとの出会いは運命だと信じたい。


それは僕とフェアグラウンドアトラクションが生まれて28年と少しを過ぎたあたりで一度クライマックスを迎える。


「好きなバンドはなに?」

「フェアグラウンドアトラクションだね」


かつて彼女に聞かれたとき僕は迷わずにそう答えた。


「聴いたことないなぁ。今度聴いてみるね」


ロックやポップスを聴いて育った僕らの世代からするとフェアグラウンドアトラクションは少し馴染みの薄いバンドなのは確かだ。


「このバンド、あなたと誕生日が同じなのね」

「そう、1988年の5月生まれなんだ。運命を感じるね」

「運命?」

「そう。運命を信じる?」


その後、当然のようにフェアグラウンドアトラクションの音楽に触れ合いながら、僕らは共に生活をしていた。


3年の月日が流れ、僕たちは2人の記念日である5月1日に結婚することになる。


結婚して1ヶ月が過ぎようとしていた頃、フェアグラウンドアトラクションのボーカルを務め、その後ソロ活動を行っているエディ・リーダーの来日公演が7月にあることを知り、僕たちは迷いなくチケットを購入した。


「ついにエディ・リーダーに会えるね」

「うん。楽しみだ」

「どんな曲をやるのかな?」

「フェアグラウンドアトラクション時代の曲から、最新曲までやるらしい」


このライブはエディ・リーダーのベスト盤のツアーだった。


「じゃあ、あのアルバムの曲もやるの?」

「もちろんファーストアルバムからも」

「1988年5月生まれのね」

「そう。僕と同じ1988年5月生まれの。久々に聴いてみようか」


そう言って『ファースト・キッス』というフェアグラウンドアトラクションのデビューアルバムをプレイヤーにかけた。


このアルバムとこの音楽がなければ、僕たちの関係もなかった。そう言い切れるほど、共に人生を歩んできたアルバムだった。


なにげなくブックレットを眺めていると”Released in 1st of May 1988″という文字が目に入った。


「えっ!」

「どうしたの?」

「5月1日だったんだ。リリース日」

「すごい!結婚記念日も同じ」

「運命だ」


奇しくも僕達も結婚指輪の内側に刻印した”1st of May”にデビューしたフェアグラウンドアトラクションとエディ・リーダー。


今夜、僕の人生で幾度も交錯したエディ・リーダーのライブに行くと思うと、僕は運命を感じずにはいられないのだ。


この音楽がなければ、その歌声がなければ、僕らはどうなっていただろう?


「運命を信じる?」

「今夜ばかりは信じたいね」


街の灯りが近づいて、いよいよ開演の時間が迫ってきた。


「1988年5月生まれ」「5月1日、ファースト・キッス」そんな運命の物語の1つのクライマックスが訪れる。


今日がその夜なのだ。

わずか1年半余りで解散

1987年、ストリートミュージシャンとして活躍していたスコットランドのグラスゴー生まれのシンガー、エディ・リーダーが旧友のマーク・E・ネヴィンに手紙を送ったことから、バンドがスタートする。


ロンドンに拠点を移し間も無くして英RCAレコードと契約、1988年にデビューした。

デビュー・アルバム『ファースト・キス』は全英チャート1位の大ヒットを収めるが、セカンドアルバムの製作中に突然バンドは解散してしまう。


アコースティックサウンド

1988年と言えば打ち込み全盛という時代で、それがある意味1980年代的な音として今懐かしがられていると言える。


当時のリスナーの感覚も「ポップスとは無機的なもの」に染まりつつあったが、そこにアコースティックなテイストを持ち込んで大ヒットしたのがこの『ファースト・キッス』であった。


ジャンルはジャズやフォーク、シンガーソングライター的な曲までバランスよく配置されている。全体的にはワルツが目立つが、ポップスとも言える。あえてジャンルを特定するとすれば、ギタロンという珍しい楽器(ベールの役割)が入っていることを考慮してスキッフルだろうか。

名曲のオンパレード

オープニングの「A Smile in a Whisper」から実に優しく心が暖まる曲。全英シングルチャートNo.1となった「Perfect」は楽しげでスキップしたくなるようなどこか懐かしい曲。


「Moon on the Rain」はまさにウェスト・コーストのシンガー・ソングライターの曲だと言われたら信じてしまいそう。シングル・カットされた「Find My Love」は、ややカリプソっぽいアレンジとメロディが良く、LIVEでも非常に映える曲。「Clare」は本物のジャズのようにスイングしている。


唯一のエディ・リーダーの(その他はネヴィンの作)作品「Whisper」は、ジョニ・ミッチェルを思い出せる曲。アルバム・タイトルが歌詞に出てくる「Allelujah」はエディの歌声が非常によく伸びている。「Falling Backwards」もジャージーな感じが素敵。ラストの「Mythology」は語りかけるような曲調で迫ってくる。

Released:1 May 1988 Recorded:1988 Genre:Skiffle,Pop Length 47:53 Label:RCA Producer:Fairground Attraction, Kevin Maloney


Track listing: 1.A Smile in a Whisper 2.Perfect 3.Moon on the Rain 4.Find My Love 5.Fairground Attraction 6.The Wind Knows My Name 7.Clare 8.Comedy Waltz 9.The Moon Is Mine 10.Station Street 11.Wh 12.Allelujah 13.Falling Backwards 14.Mythology


written by Yuta

@2019 valve all rights reserved.