物語の始まり②〜スコットランドそして代官山


今ではスコティッシュパブのオーナーにまでなりましたが、その経緯は自分でも少々異質に思います。


大学の頃からロックバンドを組みOasisやThe BeatlesなどいわゆるUKロックに熱をあげて様々なアーティストの楽曲をカバーしたり、UKロックのCDを買い集めていました。


京都と東京でそれぞれバンドを組み、ミュージシャンとして経験を積み重ね、順調に実力をいきました。


ところが2011年、22歳のときメジャーデビューを目前にした僕がボーカルを務めていたロックバンドがトラブルに巻き込まれて解散し、全てが白紙に戻り音楽活動を休止するまでに至ります。


そしてその直後、東日本大震災が起こります。


自然と音楽を聴くこともなくなり、仕事も辞めて武蔵小山の家に引きこもり、持っていたギターを一本ずつ売りながら生活していました。


「一旦リセットしよう」


そう思いながらできるだけ裸の心でフィルターのかかっていない眼で物事を見ようと思っていました。持ち前の中二病を発揮し能動的自己破壊を繰り返しながらも、真の意味で生まれ変わりたいと考えていました。


今まで見たことのない景色を、飲んだことのない酒を、読んだことがない本を、聞いたことのない音楽を心が求めていました。


バーボンウイスキー一辺倒だったのがスコッチウイスキーを飲みはじめ、サマセットモームをはじめとした海外の古典小説を読み、聴く音楽も少し変わりました。


KT Tunstall、The Fratellis、The View、Trashcan Sinatras、Lauなどなど、、、

その中でも最も心に突き刺さったのがFairground Attractionのアルバム『First of a Million Kisses』でした。このアルバムとの出会いが僕のその後の人生を大きく左右します。


運命を信じる? The First of a Million Kisses/Fairground Attraction


賢明な読者の方はもうお気づきかもしれませんが、これらのアーティストは皆スコットランドの出身なのです。


僕がこれに気づいたのは5年後のことで27歳のときでした。(遅い)


この頃は、仕事にも復帰して代官山蔦屋のラウンジバーの立ち上げを経て中目黒のオーセンティックバーでチーフバーテンダーをしていました。家も武蔵小山から代官山に引っ越して、職場の仲間たちと新たにバンドを組んで時折バーやカフェで小さなライブをしたりしていました。


僕のスコティッシュミュージックに対する愛は日に日に深まって行き、フォークや伝統音楽も聴くようになりました。


ある日の中目黒のバーでの仕事帰り、朝方家路に向かう坂道の途中でiPodがシャフルで流したEddi Readerの『New York City』で突然涙腺が崩壊し坂道を歩くこともままならなくなり、そのまま滲んだ視界に足を止めてひとり路上で号泣したこともありました。


さぞかし変人に見えたことでしょう。大変失礼いたしました。

このEddi ReaderもFairground Attractionの元ボーカリストでスコットランドの出身です。2016年の7月にはビルボード東京でEddi Readerのコンサートもあり一層スコットランドへの憧れも強くなります。


「大好きな音楽とウイスキーの故郷をこの眼で見てみたい」


思い立ってからは早いのが長所であり短所な僕は翌年の5月、結婚式の翌日からハネムーンでスコットランドに行くことを決め実行に移します。


旅用のギターと必要最低限の着替えをカバンに詰めてハネムーンとは思えないほどストイックにウイスキーの蒸溜所を廻り、本場の音楽に触れました。

日本に帰ってきた頃には完全に感化されて、バンドではタータンを身に纏いスコットランドの曲を演奏し、365日スコッチウイスキーを飲み、自ら進んで沼にハマって行きました。


2019年には2度目のスコットランド旅に当時1歳の娘も連れて、家族みんなで仕事も辞めて赴くことになります。


「代官山にスコティッシュパブをオープンしよう」


約1ヶ月間の旅を終え、株式会社を設立し翌年4月に代官山に『valve daikanyama』をオープンします。


これまた目まぐるしい日々でしたが会社設立からお店のオープンまでの物語はここでは割愛します。


高校生のときからの憧れの街である代官山でトムクルーズに憧れたギター青年がスコティッシュパブを出すとは想像していませんでした。


イントロが鳴り終わりいよいよ僕たちの物語がはじまります。


Welcome to my most humble, dishonorable establishment.

ささやかな僕の店へようこそ。


written by Yuta

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