ストラスアイラ STRATHISLAの特徴とおすすめの飲み方〜妖精ケルピー伝説〜

"Strathisla 12 years old" Photo by Yuta

ストラスアイラとは


ストラスアイラはスコットランドのスペイサイド地域の東寄りに位置するキースにてつくられるシングルモルトウイスキーです。

何を隠そう筆者が最も愛するシングルモルトウイスキーでもあります。


世界的に人気のあるブレンデッドウイスキー“シーバスリーガル”の核を担うキーモルトとしても有名なウイスキーで「HOME OF CHIVAS(シーバスの故郷)」と呼ばれています。


ウイスキーのブランドはよく谷間を意味する「グレン」という言葉が使われます。

「ストラス」もゲール語で同じ”谷間”という意味合いを持ちますが、「グレン」は狭い谷間、「ストラス」はそれより広い谷を意味します。


ストラスアイラの「アイラ」は、ウイスキー好きの方はアイラ島を思い浮かべてしまうかもしれませんが、これは蒸溜所近くに流れている「アイラ川」を指しています。

つまりストラスアイラは「アイラ川が流れる広い谷間」という意味を持ちます。


現在蒸溜所はペルノ・リカールのウイスキー部門であるシーバスブラザーズの参加に入り製造を行っています。


ストラスアイラ蒸溜所のある町「キース」


ストラスアイラ蒸溜所があるキースはインヴァネスから電車で1時間、スペイサイド地方の東寄りに位置するマーレイ市の小さな町です。


人口約4,700人のキースはかつてリネン産業で栄えた町でしたが18世紀に衰退、これに代わって蒸溜所が建てられました。


1976年に地元の実業家、ジョージ・テイラーがリネンに変わる投資先として目をつけたのがウイスキー産業で、ストラスアイラ蒸溜所は彼の手によって建てられます。


そのため創業当時から「ミルタウン(工場の町)」から由来する「ミルトン」の名で親しまれ、「ストラスアイラ 」と呼ばれるようになったのは1970年以降です。

"Strathisla Distillery Entrance, 2017" Photo by Yuta

ストラスアイラ蒸溜所の歴史


小さな町キースを流れるアイラ川を抱く20マイルに渡る広い谷に囲まれた場所に、ストラスアイラの故郷「ストラスアイラ蒸溜所」はあります。


キース駅から歩いて5分ほどの街の中心から少し外れた住宅街のなかに、スペイサイド地方に現存する最古の蒸溜所として、今なお優雅で美しいたたずまいが残されています。


創業は1786年実業家ジョージ・テイラーによって建てられました。


建物は修道院に付属していたビールの醸造所を改装して建設されました。設立当初の蒸溜所名はミルタウンですが直後にミルトンに改名されました。


1823年になるとマクドナルド・イングラム社が蒸溜所を買収し、その7年後にウィリアム・ロングモアがオーナーの権利を取得しています。

1870年、蒸溜所の名前を「ストラスアイラ 」に変更。


1879年、火災により蒸溜所建屋・設備が損傷し改築作業が行われ、現在の蒸溜所のかたちとなります。


1880年にウィリアムが引退し、義理の息子ジョン・ゲデス・ブラウンが後継者となりウィリアム・ロングモア社を立ち上げます。以降ロングモア社は1949年に破産するまで蒸溜所の経営を行います。


1890年に蒸溜所名を「ミルトン」に戻します。


ロングモア社破産の翌年1950年蒸溜所は競売にかけられることになり、シーグラム社が傘下のシーバス・ブラザーズを通じて71,000ポンドで蒸溜所を取得し、この時蒸溜所名が再び「ストラスアイラ 」になりました。


1965年にはポットスチルを4基に増設。


2001年ペルノ・リカールとディアジオ社がシーグラムのスピリッツ部門を買収し、以降現在に至るまでストラスアイラはペルノ・リカールの傘下として経営が行われています。


蒸溜所の入口付近にはヒースの花が咲き誇っており、スコットランドで最も美しいとされる外観を飾る双頭のパゴダ(アジアの仏寺の塔を思わせる屋根)は、蒸溜所建築における第一人者、チャールズ・ドイグの作品として有名です。


水車や石造りの建物とともに醸し出される印象は、この地を訪れる人々から「絵画のように美しい」と称賛されています。

"Distillery Beautiful as a Painting, 2017" Photo by Ayaka

蒸溜所としては珍しく住宅街のなかにありますが、案内役のアリスさんは「周りは住宅街だけどストラスアイラは香りがいいから、クレームはないの」と香りの良さをアピールしていました。


たしかにその通り。ストラスアイラの蒸溜器の近くに立つとすでに甘く焼きリンゴやスイートポテトのような香りが漂ってきます。樽に入る前から甘く鼻腔をくすぐるような香りがするとは!と大変驚いた記憶があります。


現在はシーグラム社の系列で、全体の90%をシーバスリーガル(ブレンデッド)の中核モルトとして使い、残りの10%がシングルモルトとしてボトリングされています。


ストラスアイラを語る上で、忘れてはならない逸話があります。それが、水の妖精ケルピー伝説です。


昔から、ストラスアイラ蒸溜所の仕込み水は蒸溜所前の道を挟んだ向かいにある「フォンズ ブイエン」の井戸から汲み上げられています。その源泉である「ブルームヒル」は日が暮れると馬の姿をした妖精”ケルピー”が現れる、と言い伝えられてきました。


そして妖精は、蒸溜所の大切な水と井戸を守り続けてくれたとされています。


ここの仕込み水はカルシウム分を多く含んでおり、それがここの隠し味的な役割を果たしていると言われています。今なお語り継がれるこうした伝説は、水にこだわるストラスアイラをロマンチックに象徴しています。

"Fons Bulliens Fountain next to the Parking Lot, 2019" Photo by Yuta

ストラスアイラの製法

使用される大麦は70%がコンチェルト種、30%がプロピーノという新しい品種でベアード社という製麦会社から購入しています。


麦芽はノンピートのものを使用しています。


主要な水にはブルームヒルの湧水を使用。この水はカルシウムを豊富に含みピートの少ない硬水となります。


ブルームヒルは昔からケルトの妖精、ケルピーが住みつき、柔らかな風味をもたらしているといわれています。


発酵槽は木製で10槽あり、54時間発酵させてもろみをつくります。


発酵槽をステンレス製か木製にするかに関しては専門家の間でも様々な意見がありますが、ストラスアイラ蒸溜所では木製にすることに強いこだわりがあります。


また、この比較的長い発行時間によりストラスアイラのフルーティな風味が生まれるといわれています。


ポットスチルは初溜・再溜合わせて全部で4基設置されています。


ボール型とランタンヘッド型の2パターンあり、ボール型が初溜用、ランタンヘッドが再溜用に使われます。

"Strathisla Pot Still, 2017" Photo by Yuta

ちなみに日本の富士御殿場蒸溜所のスチルはこのストラスアイラと同じタイプのものが使われています。


昔は2基しかなかったスチルですが1965年に増築が行われた際、新たに2基設置され現在の生産量は年間240万リットルとなります。


1回の仕込みで1500リットルのアルコールを蒸溜が可能です。


ニュースピリッツの度数は約68%で、アイラ川の対岸に位置する姉妹蒸溜所「グレンキース蒸溜所」にパイプで送られ、63.5%まで加水調整して樽詰めします。


63.5%のアルコール度数は熟成に最も適したアルコール度数であると言われています。


熟成に使う樽はバーボン樽とシェリー樽、がメインです。

"Warehouse of the Strathisla Distillery, 2017" Photo by Yuta

オフィシャルボトルのストラスアイラ12年はバーボン樽95%、シェリー樽5%の比率でブレンドされています。


蒸溜所の敷地面積が小さいため自社に収まらなかった樽はグレンチンキー蒸溜所のウェアハウスに移動され熟成が行われることもあります。


ストラスアイラのラインナップ

  • ストラスアイラ12年


華やかでバーボン樽由来の風味豊かな味わいが印象的。リンゴやシナモン、ドライアプリコットの香り。甘く華やかな木樽香を感じます。


ストレートで飲んでみると、口当たりはクリーミーで滑らかで、カシューナッツやマカダミアのような甘みが口一杯に広がり、かすかにスパイシーさが追いかけてくる。


フィニッシュは深くリッチ。モルトやスイートポテトのような優雅な香りが鼻を抜けていく。

12年のボトリングはバーボン樽95%、シェリー樽5%。


甘く華やかな香りと樽やモルトを感じる味わいで、シングルモルト初心者、ウイスキー初心者にも勧められる一本です。


ストラスアイラのおすすめの飲み方


12年が日本で終売になり、これから見かけることが少なくなるであろうストラスアイラ。

キーモルトとなっている「シーバス・リーガル」や「ロイヤル・サルート」はまだまだ飲むことができるので、しばらくはブレンデッドウイスキーの原酒として活躍していくことでしょう。


香りはとても甘いリンゴと蜂蜜。そして奥からモルトの香りとハーブやフローラル。味わいはリッチでクリーミー、ナッツの甘みを感じます。キラキラした夏のようで、少しスパイシー。


繊細さのあるウイスキーなので、テイスティンググラスにいれて、ストレートで飲むのがおすすめです。


ストラスアイラ好きには同じくキースの町にある、ストラスアイラの第2蒸溜所として創設された「グレンキース」のファンも多い気がします。


ストラスアイラが気に入ったのであれば、次に「グレンキース」を飲んでみるのもいいかもしれません。


Data

  • 蒸溜所 Distillery:ストラスアイラ Strathisla

  • 意味 Meaning:アイラ川の広い谷間 Wide Valley of the Isla River

  • 創業年 Founded:1786

  • 地方 Region::スペイサイド Speyside

  • 地域 Location:キース Keith, Banffshire

  • 所有者 Owner:ペルノ・リカール Pernod Ricard

  • 生産能力 Capacity:2,400,000ℓ

  • 仕込水 Water Source :Broomhill, Cossburn Springs

  • 麦芽 Malt Specification:ノンピート Non peated

  • モルトスター Malt Supplier:ベアード Bairds

  • グリストの量 Grist Weight:5.32t

  • 浸麦槽の素材 Mash Tun Material:ステンレス Stainless Steel

  • 浸麦槽の種類 Mash Tun Tipe:Traditional

  • 酵母の種類 Yeast Type:ケリー Kerry

  • 発酵槽の大きさ Washback Size:23,800ℓ

  • 発酵槽の素材 Washback Type:木製 Wood

  • 発酵槽の数 Washbacks:10

  • 発酵時間 Fermentation Time:54h

  • 蒸溜器の数 Stills:4 (2 wash, 2 spirit)

  • 加熱方法 Heat Source:蒸気加熱 Steam heating coils

  • 初溜釜の容量 Wash Still Charge:11,900ℓ

  • 初溜釜の形 Wash Still Shape:ランタン型 Lantern

  • 再溜釜の容量 Spirit Still Charge:8,081ℓ

  • 再溜釜の形 Spirit Still Shape:ボール型 Boiling balls

  • 冷却装置 Condenser Type 簡易シェル式 Shell and tube

  • 原酒度数 New-Make Strength:72%

  • 樽詰度数 Filling Strength:63.5%

  • 樽の種類 Main Cask Type:バーボン、シェリー樽 Bourbon,Cherry

  • 貯蔵方式 Warehousing:ダンネージ型 Dunnage type

  • 主なブレンド先 Blend Destination:シーバスリーガル Chivas Regal、ロイヤルサルート Royal Salute

Other Suggestions グレンキース、アベラワー、ロングモーン


written by Yuta

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